ピアノを目の前にして、初めて右手人差し指一本で弾く音。
これは、だいたい中央のドです。
このドの音は、確かにドでもありますが、実はドではありません。
一体、どういうことでしょうか。
わかりやすく解説していきます。
私たち個人には、名前があります。
他に、立場としての呼ばれ方があります。
それは「お父さん」「お母さん」「兄さん」「おばあちゃん」「娘」などです。
一人の同じ人間なのに、呼び名が異なるなんてちょっと不思議ですね。
でも、相手との関係や立場を端的に表すには便利ですよね。
これをドに例えると、このようになります。
「音の名前はC、立場の名前がド」
これが「移動ド」の考え方の第一歩です。
ピアノの中央の音に話を戻しましょう。
中央のドを弾きながら「この音、なんていう音か知ってる?」と尋ねると、
老若男女ほとんどの方が「ド!」と自信満々に答えます。
これが「固定ド」の考え方です。
冒頭で「中央のドは、確かにドでもある」と表現したのは、このためです。
これを私たちの生活に例えてみましょう。
子どもの友達やPTA活動では「〇〇ちゃんのお父さん」とだけ呼ばれるケースがあります。
このような場合、お父さんの姓は知っていても、名については知られていないことが多々あります。
そして、その距離感のままでは、相手に本当の名前は覚えてもらえないままですよね。
そうして、このような距離感で音楽と付き合う人にとって、中央のドはドのままなのです。
「移動ド」において、ドレミファソラシは階名と言って、立場の名前です。
階名をファミリーに例えると、父、母、祖父母、兄弟、姉妹など、関係や性格が見えてきます。
そしてファミリーとなったドレミファソラシは、時間と協力して、様々なドラマを創造します。
この時、音そのものの名前は音名といいます。
音名はC(ハ)・D(ニ)・E(ホ)・F(ヘ)・G(*ト)・A(イ)・B(ロ)などです。
「移動ド」では、すべての音がドレミファソラシの、どれにでもなることができます。
どの立場になるかは、調によって決まります。
この辺りの話は、また別の機会に。
音楽が階名で聴こえた時の快感は、格別ですよ!